もうすぐ公開「春の雪」について


今週末に公開される「春の雪」。妻夫木聡竹内結子共演作です。宇多田ヒカルが歌う主題歌も大人気、映画もきっとヒットすることでしょう。

原作は三島由紀夫の絶筆となる「豊饒の海」全四巻。「春の雪」はその一巻目です。以下「奔馬」、「暁の寺」、「天人五衰」と続きます。四巻を通じて登場するのが本多繁邦(ほんだしげくに)という人物。彼は「春の雪」の主人公松枝清顕(まつがえきよあき)〜妻夫木くんが演じます〜の友人です。
本多繁邦が生き抜く八十余年、その間に4人の生まれ変わりの人物とある一人の女性が関わりを持ちます。
今日は第一巻目「春の雪」について書いてみようと思います。

ごくごく普通の青年本多繁邦と誰もが認める美少年松枝清顕は学習院に通う大親友。清顕は自分の容姿にも家柄にも自信をもっているうぬぼれやさんです。彼の自慢は自分の身体の左脇腹に整然とならぶ3つのほくろ。そんな清顕には年上の幼馴染の綾倉聡子〜竹内結子が演じます〜という女性がいます。
聡子は凋落した華族の娘。血筋だけで宮家への婚礼をのぞまれます。でも、聡子が好きなのは年下の清顕。清顕はそんな聡子の気持ちに薄々気付きながらも邪険にします。それなのに清顕は聡子と宮家との婚約が新聞紙上にも載り世間に知れ渡った後で、聡子を失ったことを後悔。彼女に告白をします。宮家と婚約が成立していながらもその愛を受け入れる聡子。
結果として彼女は妊娠してしまいます。時は明治の終わりから大正時代にかけての頃。婚前交渉はおろか、妊娠なんてばれたら牢獄行きです。そんな危険をおかしてでも初恋をつらぬいた二人。でも事実は残酷です。聡子の妊娠は家族にばれ、中絶手術を受けることに。聡子は清顕には内緒で関西方面に手術をうけるべく旅立ちます。妊娠のことを知る由もなくただの旅行と思い聡子を駅に見送りに行く清顕。それが聡子と清顕の今生の別れでした。
関西方面に出かけて以来聡子とは音信不通。清顕はだんだん不安になります。なんで聡子は僕と会ってくれないんだろう・・・・。やがて清顕は事実を知ります。そして聡子が奈良の尼寺にかくれていることも。その頃には聡子を妊娠させたのが清顕ということも周知の事実となり彼は蟄居させられることに。それをなんとか抜け出して尼寺に聡子に会うべく出かける清顕。
でも出かける度に門前払いをくいます。それでもじっと尼寺の山門に続く階段で待つ清顕。そんな彼を胸の痛みが襲います。それでも立ち尽くす清顕。とうとう彼は肺炎をこじらせ奈良を去ることを余儀なくされます。奈良の旅館で病の床に臥す清顕が迎えを頼んだのが親友の本多でした。本多が迎えに行ってからでも尼寺に行こうとする清顕。もう階段をあがる体力も気力もありません。清顕は本多に「僕の代わりに尼寺に行ってくれ」と頼みます。本多は清顕と違い寺の中に入ることを許されますが、聡子に会うことは拒絶されます。清顕も本多も去った後、尼寺内で聡子は髪を剃り落とし出家することになります。
東京へ帰る汽車の中でも胸の痛みにさいなまれる清顕。苦しい息の下から急に目をみひらいた清顕は本多の手をとって言います。「今、夢を見ていた。又、会うぜ。きっと会う。滝の下で」と。
帰京後二日たって、松枝清顕は二十歳で世を去ることになります。本多への形見として彼が書き綴った「夢日記」を残して・・・・・。


この第一巻目だけで充分すてきな小説ですが、三島由紀夫のすごいところはこの後60余年に渡っての壮大な「生まれ変わり」の話を繰り広げていくのです。
生まれ変わりの証拠は清顕の予言「又、会うぜ。きっと会う。滝の下で」と生まれ変わりの青年が持つ前世の記憶、そして彼(彼女)の身体に印された整然とならぶ3つのほくろ・・・・
第二巻「奔馬」については明日。この巻が一番三島らしいです。キーワードは「自決」。

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写真は私の持っている「豊饒の海」全四巻。父のおさがりなのでボロボロです。

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