はてな年間100本映画クラブ[011]『ナイロビの蜂』


ベストセラー作家ジョン・ル・カレの名作が原作です。原作がいいのと、脚本も頑張って書いてあったので、深刻なテーマにもかかわらず一気に鑑賞できました。以下、感想を書きますが、ネタばれになります。ぜひぜひ先入観なしで観ていただきたいので、ご注意ください。ちょっと間をあけますので、その間にご判断を。


ジョン・ル・カレの原作はこちら
日本語版

ナイロビの蜂〈上〉 (集英社文庫)

ナイロビの蜂〈上〉 (集英社文庫)

ナイロビの蜂〈下〉 (集英社文庫)

ナイロビの蜂〈下〉 (集英社文庫)

原書
The Constant Gardener

The Constant Gardener


原作からもわかるとおり、原題は「The constant gardener」。それに対し邦題は「ナイロビの蜂」。本はこれから読むので、映画を観るまではこの二つの題の落差に納得がいきませんでした。でも、鑑賞後の今となっては、両方の題名に納得です。なんでこんなかけ離れた題名に納得がいくのか・・・・ぜひぜひ映画をご覧下さい。


ナイロビの蜂」公式HP〜ハチミッツはやめてくれえ!
http://www.nairobi.jp/

庭いじりが趣味のジャスティンはイギリス外務省の一等書記官。ある日外交問題を論ずる博士の代理で発表をします。発表後の質疑応答の際に厳しい意見をなげかける一人の女性がいました。彼女の名はテッサ。人権問題のために働いている熱情あふれる女性です。あまりの激しさにまわりから孤立する彼女をジャスティンはかばってあげます。彼女をお茶にさそったジャスティン。反対に「ありがとう、お礼に私がごちそうするわ」といわれます。ほどなく恋に落ちた二人。
そんなジャスティンにケニア赴任の話が。これをきっかけに二人は結婚します。ケニアのナイロビでも東奔西走する彼女。妊娠して大きなおなかを抱えながらも〜レイチェルが実際に妊娠した自分の体をすべてさらけ出しています。妊婦ヌードあっぱれです〜頑張る彼女。でも彼女の活動をたたえる人ばかりでなく、うとましく思う人間もいます。大使館でのパーティでも忌憚のない意見を述べる彼女に対し、圧力がかかります。ジャスティンにも「自分の妻くらいコントロールするように」とのお達しが。それに加え、「彼女がホテルでほかの男性となにしているのか知っているのか?」という怪文書がメールでジャスティンのもとに届いたりも。でも彼女にさぐりを入れてみて、やましいところがないのを見るとジャスティンは彼女に干渉することもなく、自分の趣味である庭いじりに没頭します(だからThe constant gardenerなのですね)。

激務がたたったせいか、残念なことにジャスティンとテッサの子供は死産でした。入院していた病院で悲しみにくれる暇もなく、テッサはあることに気づいてしまいます。それは人権問題に深くかかわる出来事。彼女はそれから一心不乱に調査をはじめます。

毎日ふらふらになって働く彼女。とうとうジャスティンは彼女の仕事に口をはさんでしまいます。でも「レポートを書かなきゃ」という彼女。レポートを書き終えた彼女はあるところにそれを送ります。返事を待つ彼女。でも待てど暮らせど返事はきません。業を煮やした彼女は「ロキというところに行ってくる」といいおいて黒人医師と出かけます。


テッサが生きてジャスティンのところにもどってくることはありませんでした。ロキ近郊の湖で彼女は黒人医師とは別の男性と惨殺死体となって発見されます。警察の発表としては「黒人医師と不倫関係にあったテッサが痴情関係のもつれで殺された」という扱いです。うちのめされるジャスティン。

でも、自宅に帰ってみると何かが変です。テッサの私物は警察によってすべて没収されています。一生懸命彼女の痕跡をたどっていくと、行く先々で警察の介入があり、帰国命令も出されてしまう始末。帰国したらしたで、パスポートを没収されてしまいます。つまり、国外には行けないということ。

そこで、ジャスティンは一計を案じます。テッサのいとこで裏稼業専門の弁護士をしているハムにあいます。ハムの息子でコンピューターの天才児ギドの協力でテッサのパソコンの解読に成功するジャスティン。そこで彼にもテッサが何を追っていたか、その追っていたものが大使館でのいさかいに通じるものであったかということ、そして相手がいかに巨大企業だったかということ(ここで、「ナイロビの蜂」という意味がわかるはずです)が次第にわかってきました。だからこそテッサは惨殺されたに違いない。

ハムの手配で偽造パスポートを入手し、手がかりをおってベルリンへ行くジャスティン。そこで手ひどい暴行を受けます。どこまでもジャスティンは見張られているということ。それだけ暴かれたくない真実があるともいえます。

手がかりをおって再びナイロビに行くジャスティン。そこで手にした真実は・・・・・・・
そして予想外の結末とは!



結末はびっくりです。そうきたか〜!映画的にはハッピーエンドとはいえませんが、ジャスティン的にはハッピーエンドです。


また、この映画のすごいところはケニア、いえアフリカの悲惨さを描いているところ。日本でのうのうと暮らしているのが申し訳なくなります。いかにアフリカが食いものにされているか、いかに人権が無視されているか。アフリカでは歩き始めたばかりの子供ですら、人生をあきらめて毎日必死で暮らしているのです。レイチェル・ワイズが撮影中にWFP国連世界食糧計画〜のCMに出演したというのも納得できます。


ナイロビの蜂、アフリカの悲惨さばかりではなく、美しい大自然も素晴らしく描かれています。ぜひ映画館の大画面でご覧ください