クラッシュ


いよいよ2月11日に我がブレンダン・フレイザーの出演作「クラッシュ」が封切られました。近場だと川崎チネチッタです。がしかーし、こともあろうに夜しかやってないの。この先どうなるかわからないけれど(以前「TAXY NY」も夜だけだったのが、最終週は朝イチだけになったりしたので)、どうも単館系の配給のようなので、すぐに打ち切られる恐れもあります。もう行けるときに行っておこうと思い、12日のバレーボールがスト負けして時間に余裕が出来たのをよいことに、思い切って18:40からの上映に行くことにしました。


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はてな年間100本映画クラブ[006] 『クラッシュ』

2004年度製作で、イギリスなどでは去年の夏に上映していた「クラッシュ」。日本でもやっと上映です。今年のアカデミー賞レースはこの「クラッシュ」と、問題作「ブロークバックマウンテン」の一騎打ち(といっても、ブロークバックマウンテンの方にかなり有利でしょうが)となるらしいし、大好きなブレンダン・フレイザーが冒険物でもなく、コメディでもない真面目な作品に出るということだけでもとても楽しみにしていました。http://www.crash-movie.jp/



『クラッシュ』
観ていない方はネタバレのところもあるので、そこのところよろしくお願いします。
お馬鹿な私は最初どうも内容がつかめなかったので、ちょっと集中力が切れかけてました。それに輪を掛けて2列前の酔っ払いのおじさん二人が結構わあわあしゃべっていたので、それも気になって・・・・。おじさんたちが途中から静かになったと同時にだんだん話に引き込まれていきました。
私にとっては、この映画「ラブ・アクチュアリー」みたいな感じでした。ラブストーリーという意味ではなく、人間同士が連鎖していくっていうかなんというか・・・。鑑賞後「デブデブ百貫デブ、電車にひかれてぺっちゃんこ」という子供の時に歌った歌を思い出しました。不謹慎ですが。
この歌ってどんどん、連鎖していくんですよねえ。ご存知ですか?


舞台はロサンゼルス。事故現場から映画が始まります。だから「CRASH」なの?と思いつつ観ていくと、スニーカーが大写しに。そこからパンしてブレンダンの登場です。奥さん役はサンドラ・ブロック。ブレン、少し痩せたかも。こういうインテリな役も素敵です。そもそも、外交官の息子で超おぼっちゃん学校に通っていた経歴がある彼は、検事役がぴったんこです。奥さんの尻にひかれているようなブレン。二人で街中を歩いていくうちに、ふと腕を組んだしぐさが通りすがりの若者二人(黒人の子です)の気にさわり、車をとられてしまいます。そこでまた場面がかわります。
この映画は場面の切り替えがとてもうまいです。ドアをしめた瞬間などに、ぱっと切り替わっていて感心しました。登場人物は検事夫婦、黒人の若者二人のほかに、刑事の男女二人組(ドン・チードルとジェニファー・エスポジト)、警官二人組(マット・ディロンライアン・フィリップ)、
韓国人夫婦、鍵屋さんとペルシア人店主、そしてそれぞれの家族・・・とまさしく群像劇です(まだまだ登場人物いっぱいです。それらがちゃんとリンクしてるんですよ)。

予告などでもとりあげられてるので一つだけ中身を紹介しますが、鍵屋さんとその娘の「透明マント」の話はとてもよかったです。劇中では触れられていませんが、以前発砲事件に巻き込まれてそれ以来おびえている娘。家も引越して今のところにきました。鍵屋さんが仕事から帰ってきて(これが、車を盗まれた検事のおうちなんですね。キーホルダーに家の鍵もついていたので、ドアの鍵を取り替えてもらうべく鍵屋さんをよんだのですが、鍵屋さんの身なりがまずしいのといれずみをしていること、人種差別もあって、サンドラ演じる妻は鍵屋さんに聞こえるような大声で「もう一度鍵を取り替えて!あの人は信用ならないわ!」と叫びます)娘の部屋を覗いてみるといない。ベットの下に娘はいました。「拳銃みたいな音がした時は、ベットの下にかくれなさい」と教わっていたから。そこで、父親である鍵屋さんはやさしく言います。「お父さんの透明マントをゆずってあげるよ。妖精からもらったんだけど、自分の子供が5歳になったら譲るように言われたからね。この透明マントをはおっていれば、拳銃の弾にあたったって怪我しないし、いやなことにもあわないよ」そう言って、娘にやさしく透明マントを着せてやります。それからほどなくして事件は起こります。鍵の修理を頼まれて出かけたペルシア人の店で、「鍵を直してもダメ、ドアを直さないと」と提言しても「鍵を直せ」の一点張り。「修理代はいらないから使った部品代だけでも」とお願いしてもペルシア人店主は聞き入れません。「もういいよ」。鍵屋さんは請求書をごみ箱に投げ捨て、帰宅します。そして、ペルシア人店主のお店は何者かに強盗に入られてしまいます。さっそく保険屋さんをよんで見積もりをとってもらいますが、「鍵屋さんから“ドアをなおさないとダメ”と提言されたのに、それを無視しているので保険はびた一文おりません」との通告が。激怒するペルシア人店主。そして彼がとった行動は・・・・・。鍵屋さんが投げ捨てた請求書をごみ箱からあさりだして、彼のおうちに拳銃を持っていくのです。仕事から帰る鍵屋さんを待ち伏せして、自宅前で拳銃を突きつけます。それをみていた鍵屋さんの娘。あんなに拳銃におびえていたのに、自分の父親をまもるべく父親の前に身体をさらします。そう、透明マントを着ているから拳銃の弾は当たらない。私がパパを守るの・・・・・
たしかに弾は命中したはずなのに、娘はかすり傷ひとつ負っていませんでした。ペルシア人店主はこどもを撃ってしまったことに衝撃を受け、でもその子供が何ら傷ついていないことにも衝撃を受け、とぼとぼと家に帰っていきます・・・・・。弾があたらなかったそのわけは・・・・


一見、関係のないような人物たちが、少しずつですが接点を持っていてどんどん話がつながっていきます。それだけでもすごいのに、この映画で思い知らされたのが「人はみかけによらない」ってことです。とても悪い人だと思っていたのに・・・・・とてもいい人だと思っていたのに・・・・なんだか、「人ってなに?」と考えてしまいました。警官二人の役でまさに考えさせられました。
また、サンドラ・ブロックが「普通の主婦役」をしているのも新鮮でした。いつもいつも強い女性役ばかりでしたから、とてもおもしろかった。
そうそう、この映画でもう一つ気付いたことは「主婦は文句ばかり言ってる」ってことかな。「主婦は」というと語弊があるかもしれないけど、みんな「旦那に文句がある」ってとこかな。一応、主婦のはしくれとしては、とても興味深く見てました。
2時間の上映時間で、これだけの登場人物を見事に連鎖させて、最初と最後をつなげた手腕に拍手です。


まだ、「ブロークバックマウンテン」を見ていないのでなんともいえないのですが、アカデミー賞レースで、「ブロークバック〜」に負けずに頑張ってほしいいい作品でした。
「CRASH」の監督さん、ポール・ハギスさんは「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本・製作をこなした方だそうです。「ミリオンダラー〜」はあの手の話はとても苦手なので、まだ観ていないのですが、この「CRASH」を観てみて、やっぱり観るべきかなと思い直した次第です。


2月12日、川崎チネチッタにて鑑賞。写真はチケットとチラシ