Extended Prom Rimix Vol.2〜昨日の続きです。


今日の話は歯が浮くほど甘いです。ついてこれる人もついてこれない人も人気ブログランキングへ!


アリスとロザリーはあたしの髪に巻きつけたカーラーをしっかりピンでとめつけた。不愉快極まりない感触がする。
「さあ、お次はドレスよ」アリスの声は期待でいっぱい。彼女は待ちきれずに軽々とあたしを抱きかかえたかと思うと、白で統一されているロザリーとエメットの大きな部屋へと連れて行く。ベッドの上にドレスがふわっと置いてあった。色はもちろん、ヒヤシンスブルー。
「ご感想は?」。楽しげにきいてくる。
実にいい質問だ。だって素敵なドレスだもの。やわらかなフリルがいっぱいで、一見しただけで、肩も露わになっているのがわかる。袖は手首の方までたっぷりとってある。透けるような素材の身頃は、ひだがよせられていて、薄い色の花がたくさんついているサッシュを結んで左にたらすようになっている。花は背中側にもあしらわれているけど、正面側はところどころひだがとってあるだけでシンプル。着丈はちょうど膝下くらい(註:tea-lengthとあります。多分ロングではないけど、ミニでもないってかんじだと思います)。

「アリス・・・・」あたしはうめいた。「こんなの着られないわ」
「どうしてよ!?」硬い声で聞いてくる。
「だって、このドレス、シースルーよ!」
「これを下に着るのよ」ロザリーがなんだか剣呑な感じのする薄いブルーの服を差し出した。
「これ、なに?」おそるおそる聞いてみた。
「コルセットよ、おバカさんね」アリスは待ちきれないって感じで言う。
「今すぐおとなしくコルセットを身につける?それとも、ジャスパーを呼んできて、あたしがあなたにこれを着せているあいだにずっと彼におさえておいてもらおうか?」とあたしを脅す。
「友だちだと思ってたのに!」あたしは非難してみる。
「いい子にしてて、ベラ」彼女はため息をつく。「あたしがこんなに一生懸命やってるのに、わがまま言わないの」

あたしはうめきながら真っ赤になった。でも彼女たちはおかまいなしにドレスを着付けていく。コルセットをつけてみると、その効果が抜群なのがわかった。
「わあ!」胸元をみてため息が出る。「胸の谷間が出来てるわ!」
「コルセットをつけるの嫌がったのどこの誰かしら?」アリスはにんまりと笑う。降参するしかなかった。
「フォークスでは最先端を行ってるかんじかな?。ちょっとキツすぎるような気もするけれど」恥じらいながら聞いてみた。
「私が思うに、“オートクチュールを身にまとってる”って感じよ」とロザリーが笑う。
「フォークスで一番になるようにじゃなくて、エドワードにとって一番になるようにしたのよ」アリスはきっぱりと言い切った。「ドレスはぴったりよ」。

それからまたバスルームへと連れて行かれ、飛ぶような手つきでカーラーをはずされていく。あたしの髪はカールされて波打っていた。ロザリーは注意深く髪を束ねて、馬のたてがみのような巻き毛を作り背中の方へと流す。ロザリーが髪をセットしてくれてる間、アリスはすばやくあたしにアイライナーをひき、マスカラをつけ、注意深く深紅のルージュをひいていく。そして、ぱっと部屋から出たかと思うと、すぐに靴をもってきた。
「完璧だわ」ロザリーは息を呑み、アリスは自分のセンスにほれぼれしてるよう。
アリスは考えるような目つきであたしのギプスを見ながら、靴のリボンを結んでくれる。
「このギプス、どうにかならなかったのかしら」アリスは悲しそうに頭をふる。「カーライルに言えばなんとかしてくれたかな?」彼女はロザリーの方を見やりながら聞いている。
「ダメだと思う」ロザリーからはドライな返事が返ってくる。アリスはため息をついた。

そのとき、彼女たちがさっと頭をあげた。
「帰ってきたわ!」
もちろん、「誰が帰ってきた」のかわかってる。ドキドキしてしまう。
「もうちょっと、待たせておこう。彼に会う前にもうひとつ大切なことがあるわ」。アリスはそう言うと、あたしをひっぱってくれる。手伝ってもらわないと、こんな靴じゃ歩けやしない。そして彼女の部屋へと行くと、大きな鏡の前にそっと立たせてくれた。

「さあ」とアリス。「いかが?」
あたしは鏡の中の見慣れない姿をじっとみつめた。鏡に映る姿はハイヒールのおかげで背が高く見える。細身のドレスは胸元もあでやかでよく似合ってる。首はすんなりとしていて、豊かな巻き毛が背中へと流れてる。ヒヤシンスブルーの色は、あたしの色白な肌に良く似合ってる。頬はまるでバラのようなピンク色。鏡に映る姿はとてもかわいい。みとれてしまった。
「OK、アリス」あたしはにっこりと笑って言った。「素敵よ」
「自分の姿を忘れないで!」アリスはそう言うと、あたしを階段の上のところまで抱えていった。

「後ろを向いて目をつぶって!」。階段下に向かってアリスは命令した。「絶対動いちゃダメよ」。
彼女はいつもなら流れるように降りていくらせん階段を、彼がいいつけを守ってるかどうか監視しながらゆっくりと降りていく。エドワードは、あたしたちに背を向けてドアのところに立っていた。黒い服を着ていて、すごく背が高く見える。あたしは今まで彼が黒い服を着ているのを見たことがない・・・・。
アリスはあたしをまっすぐに立たせると、ドレスのすそを直してくれて、髪も整えてくれた。それからピアノのところへ行きベンチに座る。ロザリーも横へ座り、見物を決め込んだ。

「見てもいい?」待ちきれないって感じの声でエドワードが聞いた。あたしの心臓もバクバクする。
「いいわよ」アリスが許可を出した。
エドワードはくるっと振り返ると、その場で凍りついた。トパーズ色の瞳が大きく見開かれる。あたしは首から頬まで真っ赤になるのがわかった。エドワードはすごく美しい。まるで夢の中のできごとで、現実じゃないみたいだ。タキシードを着ていて、まるで映画俳優のよう。
あたしが信じられない面持ちで見つめていると、彼はそっとためらいがちにあたしの方へと歩いてきた。
「アリス、ロザリー。礼を言うよ」エドワードはあたしから目を離すことなく息をのむ。あたしの耳にアリスの得意そうな忍び笑いが聞こえてきた。
エドワードはあたしの前に立つと、冷たい手であたしのあごを持ち上げ、そっとのどに唇を押し当てる。
「きみの香りがするよ」そう言って身体を離す。そしてもう片方の手にもっていた白い花をあたしに差し出した。
フリージアだよ」そう言って、あたしのカールされた髪にそっとさしてくれた。「もちろんきみの香りには遠くおよばないけど」
エドワードは一歩さがると、もう一度あたしをじっと見る。心臓がとまるくらいの素敵な笑顔で「きみはほんとうに美しい」。と言ってくれる。
「それは、あたしのセリフよ」声がふるえないように気をつけながら言ってみる。「やっとあなたが架空の人物でないって確信したのに、そんな格好をされるとまた一気に夢の中の存在へと後戻りしちゃう」
エドワードはあたしを腕の中に抱き上げると、顔を寄せてくる。燃えるような目つきにあたしが目を閉じたとき・・・・

「リップスティックを塗ってるのよ!!」とアリスがぴしゃりと言った。
エドワードは反抗的に笑うと、あたしの唇のかわりに鎖骨のくぼみへそっと唇を押し当てた。
「準備はできた?」エドワードが聞いてきた。
「誰も今から何があるかなんて教えてくれないの」
彼はもう一度笑うと、肩越しにきょうだいの方をみて聞いた。「ベラは何もわかってないの?」「ぜんぜん」アリスがくすくす笑いながら言う。
エドワードがいかにも大喜びって感じで笑うから、にらみつけてやる。「あたし、何か忘れてる?」
「心配しなくていいよ、ベラ。すぐにわかるさ」



「彼女を降ろして、エドワード!写真を撮りたいの」エズミが銀色のカメラを手に階段を下りてきた。
「写真ですって?」エドワードが注意深くあたしを立たせてくれている間にイジワルな質問を思いついた。「あなたって写真にちゃんと写るの?」と聞いてやると、にらみつけてきた。
エズミは何枚か写真をとってくれたけど、エドワードが笑ってばかりいて時間がたってしまう。

「もうそろそろ行かないと」アリスがエドワードに向かって言い、あたしをドアの方へ連れて行ってくれる。
「アリス、行かないとって、どこに行くの?」
「ジャスパーも、エメットも、ロザリーも行くのよ」
あたしは秘密をさぐろうと、おでこにしわをよせながら一生懸命考えた。エドワードはあたしの考えをよみとろうと盗み見している。


「ベラ、おとうさんから電話よ」エズミが教えてくれた。
「チャーリーが?」エドワードもあたしも異口同音に叫んだ。エズミはあたしに電話を手渡そうとしたけれど、あたしが動けないように片手でがっちり抱え込んでおいて、エドワードがすばやく電話を奪い取る。
「ちょっと!」と言ったときには、もう話し始めてた。
「おとうさん、エドワードです。何かありました?」ちょっと心配そうな声。あたしは真っ青になる。でもすぐに彼の表情は楽しそうになり、急ににやりと笑った。
「電話をかわってください。僕が話します」何が起こってるかよくわからないけど、エドワードはチャーリーとの会話を楽しんでいるみたい。あたしは体の力を抜いた。
「もしもし、タイラーか。エドワード・カレンだよ」彼の声はうわべはフレンドリーだったけど、口調はかすかにとげとげしいのをあたしは聞き逃さなかった。でもタイラーがあたしの家で何をしているのかしら?・・・・恐ろしい事実が判りかけてきたみたい。
「誤解があったなら申し訳ないが、ベラは今夜はあいていないよ」と、ここでエドワードの口調ががらっと変わった。話し続けてるうちに脅迫めいた口調になっていく。
「正直なところ、いつ来てもらっても無理だ。紛れもなく、彼女のそばにいられるのは僕ひとりだけだ。まあ、今夜は残念だったな」そういうとぴしゃりと電話を切り、顔一杯に口を広げて笑った。

「プロムにつれて行くつもりなのね!!!」激しく責めたてた。あたしの顔と首は怒りで真っ赤になる。涙があふれでてきたのがわかった。
エドワードはあたしの反応にびっくりしている。彼は暗い目つきをしながらきゅっと口もとをひきしめた。「だだをこねるなよ、ベラ」

急にアリスがそばに来てあたしの肩越しに勇気づけるように言った。「ベラ、あたしたちも皆行くのよ」
「どうして教えてくれなかったの?」
「お楽しみってとこ」アリスはのんきに答えた。
エドワードがあたしの耳もとでベルベットのような声で真剣にささやく。「困らせないで」
そして、圧倒的な眼力のゴールドの瞳であたしを見つめる。もう抵抗なんてできやしない。
「わかったわよ」にらみつけることもできないから、ふくれてやった。「黙ればいいんでしょ。でもみてなさいよ」と言ってやる。「ここのところ、あなたがいつも心配してくれてるみたいにトラブルに襲われてばっかりだから、今日あたり、もう片方の足も折っちゃうかも。この靴をみてよ!いかにも危ない代物って感じでしょ!!」そう言って、目の前にぐいっと足を突き出してやった。

「うーん」・・・・。エドワードは時間をたっぷりかけてあたしの足をじろじろと見つめると、キラキラした目でアリスを見つめて、「また礼を言わなきゃな」と一言言った。



ここまでで、5ページ半。あと少しです。頑張ります。明日はこの「Outtakes」を読んで、思わず私が衝動買いしてしまった「あるもの」の写真もアップして届けします。