Extended Prom Remix(プロムの別バージョン)


お待たせしました(誰も待ってないっつうーの)。Twilight Outtakesからプロムの別バージョンです。7ページあるので、数日かけて読んでいきます。


原文をちゃんと読めるか不安な方も楽観視してくださる方も人気ブログランキングへ


以前書いたとおり、このOuttakesは作者の「自己満足全開」です。作者としては、ピンクのリボンやタイで縁取られたロマンティックな世界を描きたかったとのことなので、もうひたすら「甘〜い」です(個人的には大好きなバージョンです)。ただし、作者は「このページを読むなら自己責任です」とクギをさしていらっしゃるのをお忘れなく!!


あたしは聞いた「アリス、いったい何を企んでいるの?」。
「まあ、黙ってみてなさい」。にんまり笑いながらアリスは言った。あたしたちは彼女の運転するピックアップの中にいた。この3ヶ月以上というもの、あたしはギプス生活をしてる。アリスがお抱え運転手になってくれている。あたしはアリスの運転が好き。

五月ももう終わりに近づいていた。フォークスはいつにもまして「なにもかもグリーン」って感じ。言うまでもなくとてもきれい。特に森はあたしのお気に入りで、ここのところはかつてないほど、森で過ごすことが多くなった。あたしと「自然」はまるっきり友だちになれたっていうわけではないけど、かなり親しくなれたみたい。
空は灰色。灰色といっても、ぞっとする感じじゃなくて、真珠のきらめきって感じ。あたしにとっては充分だ。あたしとしては、雨が降ってなくて寒くなければ言うことなし。雲は厚くたれこめているほどいい。だって、雲が厚くたれこめているっていうことは、エドワードたちが自由に行動できるってことだから。

天気は好条件なのに、あたしの気分はとげとげしかった。それはアリスのとっぴな行動のせい。彼女は「今週の土曜は“女の子のお出かけの日”」と頑固に主張して、あたしをポートアンジェルスへと連れ出した。そして嫌がるあたしをそっちのけで、ネイリストにあたしにマニキュアとペディキュアを施すように言う。せめてピンクならまだしも、キラキラの深紅の色。ギプスをしてるほうの足にもちゃんとペディキュアをする。
それからアリスはあたしを靴屋さんに連れていった。もちろんあたしは片足しか試着できないけど。あたしの精一杯の抵抗を無視して、アリスは高価すぎる全くもって実用的でないハイヒールを買った。サテンのリボンを足首前で交差させて、後ろで結ぶタイプ。華奢すぎて履いたら転んでしまいそう。色は深いヒヤシンスブルー。あたしのクローゼットはロスのショッピングモールでアリスが買い込んでくれた沢山の服(どれもフォークスで着るには薄手すぎる)で困惑するほど埋め尽くされていたけど、この靴に見合う服は持ってない。そもそもいつもスニーカーばかりだから、ハイヒールなんて履いたことなんてないし。アリスはあたしの無駄な抵抗をことごとくはねつけていく。「ここは、高級ブティックじゃないけど」とアリス。「でも頑張っておしゃれしなくちゃね」彼女はそういうと、戦々恐々として待っていた店員にクレジットカードを手渡した。


昼食はドライブスルーだった。窓越しに品物を受け取って食べる。食べながらどうしてこんなに急いで食事をとらなければいけないのか聞きたかったのに、答えてもらえなかった。普段のアリスの運転はまさにお抱え運転手そのもの。時速2〜30マイル以上出すことなく慎重なのに、今日はなんだか急いでる。急いでる割にはあたしの車はすごくトロくて、ロザリーのスポーツカーのように、っていうわけにはいかなかったけど。
アリスがきっぱりと心に決めてるスケジュールには、ちょっと問題点があった。それは、あたしがもう6時間以上もエドワードの顔を見ていないってこと。悲しいくらい不安になる。あたしの記憶が確かならば、ここ2ヶ月のあいだ、そんなことはなかったはずだ。


チャーリーは相変わらず気難しかったけど、あたしはあまり気にしてなかった。だって、チャーリーとエドワードは仲直りが出来てたから。チャーリーが家に帰ったときに、あたしとエドワードがキッチンのテーブルで宿題をやっていても何も言わないし、ときにはエドワードとチャーリーの二人してスポーツ番組を見ては大騒ぎしたりもしてる。でも彼は決めたルールをかたくなに守り通していた。決まって夜10時になるとドアの方を見て、エドワードに帰るようにうながす。もちろんチャーリーは、エドワードが車を運転して家に帰り着いてから再びあたしの部屋にあらわれるまでものの10分もかかってない、なんてことは知る由もない。

また、チャーリーはアリスに対して深い深い感謝の念を抱いていた。それは時には彼女を困惑させるほどだった。実際のところ、あたしがこのかさばるギブスをつけている間は女の人の手助けが必要だった。やさしいアリスはあたしの日常生活をいつもサポートしてくれてた。チャーリーにとって、ほとんど大人の女性になってしまった娘の入浴の手伝いなんて、恐怖以外のなにものでもなかった。もちろんあたしにとってもだけど。だからこそ、チャーリーはアリスに「エンジェル」というニックネームをつけて大いに感謝してた。そう呼ばれるたび、アリスはちょっとこまったような表情を浮かべながらも笑みを浮かべて踊るように家に入ってきた。そして、人間であればだれもが魅了される美貌と優雅さで手伝いをこなし、夜になると気取った声で「チャーリー、また明日」と挨拶して帰っていく。そのたびにチャーリーはぼうっとしてた。


「アリス、家にむかってるの?」と聞いた。もちろんこの場合の「家」とはカレン邸のことを言ってるってことだ。
「そうよ」とアリス。「でも、エドワードはいないわよ」。
あたしはためいきをつきながら聞いた。「どこに行ったの?」
「ちょっと用事で出かけてるの」
「用事?」とオウム返しで聞いてみる。ここであたしの口調はがらっと懇願モードへとかわる。
「ねえ、どこに行ってるか教えてよ」
アリスはにんまり笑いながら頭を振る。「おたのしみよ」。

カレン邸に着くと、アリスはあたしを抱きかかえて階段を上り、彼女のベッドルームほどもあろうかというバスルームに連れて行った。驚いたことに、そこには至上の笑みを浮かべたロザリーがピンクの椅子のうしろに立ってあたしたちを待っていた。あたしが呆然としている間に、手際よくスタイリングの道具をカウンターに並べていく。
「座って」とアリス。あたしはしばらく彼女の様子をうかがったけれど、従うしかないとわかって足をひきずりながら椅子へと座った。その途端にロザリーがあたしの髪をブラッシングしはじめる。「どうしてこんなことしてくれるの?」とロザリーに聞いてみる。
「拷問に近いわね」。ブラッシングの手を休めることなく彼女がつぶやく。「でも、これから何があるかなんて教えてなんかあげないわよ」。そして、ロザリーはあたしの頭をシンクにつっこむと、ミントとグレープフルーツの香りがするシャンプーで洗いはじめた。洗い終わるとアリスが激しくもつれたあたしの髪をタオルで拭いてくれる。そしてきゅうりの香りがするスプレーをして、またタオルで拭く。
それから二人して髪をとかす。きゅうりの香りのスプレーはどうやら髪がもつれないようにするためだったみたい。ドライヤーをかけながらどんどん作業がすすめられていく。
髪をひとまとめにするあたりから、スピードが落ち、二人が気がかりな表情を浮かべた。あたしは内心大喜び。ヴァンパイアでも思い通りに行かないこともあるんだ・・・・。
「もう、ベラの髪の多さときたら!!!」ロザリーが泣き言を言う。
「ジャスパー!」。けっして大きくはないけれどよくとおる声でアリスが呼ぶ。「他のドライヤーを捜してきて!」。ジャスパーがドライヤーをうやうやしく掲げてやってきた。彼はしげしげとあたしの頭を見ると、二人が作業を続けるのに加わった。

「ねえ、ジャスパー」あたしは彼に助けを求めた。
「ごめんよ、ベラ。僕は何も口出しできないのさ」とジャスパー。
彼はあたしの髪がふわふわに乾かされたとたんに、優雅に逃げ去った。あたしの髪は3インチほどかさが高くなっていた。
「どうしようっていうの?」こわごわ聞いてみる。でもアリスとロザリーはあたしのことなんててんで無視してホットカーラーを取り出した。あたしはホットカーラーがうまく巻けないように抵抗してみたけれど、そんなことには臆せず二人はあっという間に黄色のカーラーを巻いていく。

「いい靴がみつかった?」ロザリーがアリスに聞いている。「ええ、もちろん。完璧なのがあったわよ」。満足そうな声で答えてる。
あたしは鏡越しにロザリーを見た。「ロザリー、あなたのヘアスタイルとても素敵」。鏡の中の彼女はゆたかな金髪を結い上げてティアラをあしらっている。
「ありがとう」。彼女はにっこり笑って答えてくれた。二人は手を休めることなく作業を進めていく。
「お化粧はどうしたい?」アリスが聞いてくれた。
「したくない」と答えたけど、もちろん無視される。
「彼女の肌はきれいだから、ほとんど何もしなくていいわよ」ロザリーが言う。
「リップスティックはいるわね」とアリス。
「それにマスカラとアイライナーね」とロザリー。「ほんのちょっとだけ」。
あたしはおおきなため息をついた。アリスがくすくす笑う。「もうちょっとの辛抱よ、ベラ。楽しみましょうよ」。
「判ったわ。あとどれくらい?」あたしはぶつぶつ言った。



ここまでで、きっかり2ページ。ちょっと文章的には切れ目が悪いですが、ページ的によしということで、ご勘弁ください。続きはまたあした。